例えるならそれは、水の中にいるかのようで。

―――そう、そうだねぇ…。
魚にでもなった感じ?
底は只管暗いんだ。
でもね、上を見上げると光が水に反射してすごく綺麗。
そして私はその中間で好きなように泳いでるってわけ。

―――ん?分かんない?
じゃあ…、
じゃあ、こう考えればいいよ。
底の只管暗いところは私たちの過去で、
綺麗な光の反射は未来。
そして、私たちがいる中間が現在。…ってね。

過去までいったら暗くって、自由に泳げないけど
未来にはまぶしくって届かないけど

でも、今は思う存分泳ぐことが出来る。…ってね。

過去はどうにもならないけど、

未来は干渉することすらできないけど、

現在なら好きなようにできるんだよって。つまりはそう言いたかったのさ♪




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『ゼラニウム 〜If〜』より 秋風真佳


虹は人の性格を七つに分けて再現しているのかもしれないわね。

―――ねぇ、見てごらんなさいよ。
あんなに綺麗なものが空にかかっているっていうのに、
貴方は目を背けるの?

―――知ってる?
虹は罪人の道標と言われているのよ。
太陽に背を向けなければ見えないから、という理由らしいわ。

しっかり見てみなさいよ。
太陽は光が強すぎて直視できないものだけれど、
虹はそれほどまでに眩しくないじゃない。

…脆いのよ。人の命と同じ。

虹が出ていると人は楽しくなるわ。
人が生まれると人は喜ぶわ。

虹が消えると人は寂しくなるわ。
人が死ぬと人は悲しむわ。

…ね?同じでしょう。

あとは空を見上げる余裕を…もたなくちゃいけないわね。




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『ゼラニウム 〜If〜』より 姫風さくら


葉のさざめきが聞こえる。何でだろ。何か安心。

―――おつかれさーん。
やっぱ仕事終わった後は木陰でのんびりのほほんタイムだよなー。
結構精神的にキツいもんがあるし。
あたし、葉擦れの音って好きなんだ。だからここにくると安心する。

―――って、何それは。
あたしだって葉擦れに感動したりするさ!
人を『食べるだけが命』みたいに言わないでほしいね!

―――…あ?
…だって、気持ちいいじゃないか。
目を閉じれば波のように聞こえるし、耳で風を感じることができるなんて。

それが、今無くなってきてるのは、残念だけど。

―――あー、元の世界では無くなってきてる。
ムカつくよー。ムカつくけどね。
樹を好んで植えるのも人間だから、やっぱ嫌いにはなれないな。

破壊したり保持したり。

…変な生き物だよな。今思えば。




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『ゼラニウム 〜If〜』より 神谷有希


懐かしい匂いがする。きっと、さっき雨が降ったから。

―――いい匂い、だよね。
モワッとした空気が、雨が降って洗浄されたみたい。
私、あんまり湿気の多いの好きじゃないから…だから、雨は好き。

―――だ、だって息苦しいでしょ?
湿気がいっぱいだと、上手く呼吸できないというか…。

耳、すましてみて。

雨の上がった澄んだ空気に、雀の鳴き声が聞こえるでしょ?
その声が、まるで鈴みたいで、好き。

残った雨粒が少しずつ地面に落ちる音。
小さな音だけど、なんかいじらしくて、好き。

そうやって、違う発見ができるんだよ。

雨が降ったら鬱陶しいのは分かるけど…、
雨が降らなかったら、何も食べれないし何も飲めないのに。

日照りにならなきゃ、分からないのかな…。

何で人って、失ってからでないとその大切さに気付かないんだろう?
なくなってもいいものなんて、この世には存在しないのに、ね。




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『ゼラニウム 〜If〜』より 海本千恵美


土の匂いがする。久しぶりの、匂いだ…。

―――んー。こんなに遊んだのなんて、久しぶりだ。
アタシはこんな歳にもなって泥遊びなんかしないからなぁ。

―――あー、そうだね。十歳はまだまだ子どもですよ。
でもだからってこれほどまでに泥だらけになることはないと思うんだけどね。
…ま、悪くはないんだけどサ。
うん。楽しかったよ。

あのときは、こうやって遊ぶ友達なんかいなかったからね。
それに、だんだん年を重ねるとこういうのはしなくなるんだよ。

―――アタシに聞かれても分かんないけど。
でも、まあ…プライドなんかでてくるんじゃない?
あと忙しくなったりね。

土の匂い、こんなにも香ばしかったんだ、なんて…大人になったら気付きもしなくなるんだろうね。
アタシはこの匂い好きだけど。
汚れっぱなしはゴメンだけどね。

こんな、今では宝物だと思うものも、
大人になったら下らないものに見えるんだ。

子どものときの大事なものを捨てた大人は、今度は何を大事なものにするんだろうね。




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『クレマチス』より 羽槻美弥歌


相当昔のやつです。『ゼラニウム 〜If〜』も『クレマチス』ももうコンテンツに無いというw でもどうせ拍手ログ項目とか作るだろうしってことで、折角なので載せちゃいました。彼女らが一体誰と話しているかはご想像にお任せします。読者さんという選択肢もあります。

因みに…
・『ゼラニウム 〜If〜』。某錬金術漫画の異世界トリップ小説
・『クレマチス』。某外国漫画の異世界トリップ小説
でそれぞれ書いてました。私異世界トリップもの好きすぎww

それでは、此処まで読んでいただいてありがとうございました〜^^
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